1.相続税と申告
相続税は、納税義務者の「申告」によって納付を行う国税です。
申告が必要かは自分で判断しなければなりません。
申告が必要な場合は、手続きも自分でしなければなりません。
月給からの源泉徴収も、納税通知で知らされることもありません。
死亡した人の財産を、遺言や相続によって受け取った場合、もらった財産の価値を基準に、税金が課されます。
ただし、財産の価値の合計額が、「基礎控除額」を超えない場合などは、課税されません。
したがって、一定の方法で計算した財産額と基礎控除を比べれば、相続税の有無を判断できます。
ちなみに、国税庁の調べによると、遺産に相続税が課された割合は、2017年で8.3%です。
2.納税義務者
相続税は、遺言で財産をもらった個人や、法定相続で財産を受け取った相続人が納税義務者です。
(1)法定相続人の条件と割合
被相続人が亡くなると同時に始まる相続開始時に、生存していることが第一条件です。
配偶者以外は、被相続人と血のつながった「血族」であることが法定相続人の条件です。
「配偶者」は、常に相続人です。
「子」は、第1順位の相続人で、養子や認知された子も同列です。
ただし、計算上、法定相続人に含める養子の数には制限があります。
実子がいる場合は養子は1人まで、いない場合は2人まで含めることができます。
「親」は第2順位の相続人、「兄弟姉妹」が第3順位の相続人です。
兄弟や姉妹は、第1順位と第2順位の相続人がだれもいない場合に、相続人になります。
相続の割合は、配偶者と子どもが相続人の場合は、配偶者2分の1、子ども2分の1です。
配偶者と親が相続人の場合は、配偶者に3分の2、親に3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1です。
なお、子が2人以上、父母ともに存命、兄弟姉妹が2人以上などの場合は、それぞれ均等に分割されます。
(3)続税の申告と納税は相続開始から10か月以内
相続税の申告と納税は、被相続人の死亡によって始まる相続開始を知った日の翌日から、10か月以内に行う必要があります。遺産分割協議の終了後に、申告と納税を行います。
(4)10カ月の期限を超えてしまう場合は未分割申告して、後日修正申告
10カ月の期限がきても協議が整わない場合は、「未分割申告」と納税をしておきます。
相続税の申告期限から3年以内に、分割方法が確定した時点で修正申告を行うことができます。
ただし、未分割申告では、小規模宅地等の特例や、配偶者控除の税額軽減の特例が適用できないため、納税額が大きくなる可能性があることに注意が必要です。
なお、修正申告をすれば、控除の適用を受けることができます。
3.相続税のかかる財産とかからない財産
(1) かかるもの
相続税のかかる財産には、
① 本来の相続財産
② みなし相続財産(生命保険金、退職手当金など)
③ 相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産
④ の3種類あります。
預貯金や不動産などのほか、営業権や特許権、著作権などの権利も、財産に含まれます。
また、生命保険金、退職手当金などは、被相続人が生きているうちに所有していた財産ではなく、死亡したことが原因で支払われます。
死亡を原因として得ることになった財産は「みなし相続財産」と呼ばれ、課税対象です。
さらに、相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産も、課税の対象です。
相続税が課税されるかどうかは、財産の名義にかかわらず、実質的に財産を管理していたのが被相続人であれば、課税の対象になります。
(2)相続税のかからないもの
相続税がかからない財産としては、
① 墓所、霊廟、祭具、これらに準ずるもの
② 生命保険金などのうち、非課税限度内の額
③ 死亡退職手当金などうち、非課税限度内の額
④ の3種類あります。
「みなし相続財産」となる死亡保険金や死亡退職金は、非課税限度額までは課税対象となりません。
非課税限度額は、死亡保険金、死亡退職金ともに「500万円×法定相続人の数」です。
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